アストロサイト由来エクソソームを介したRps6の輸送がアルツハイマー病モデル神経細胞の局所翻訳とシナプス機能を促進する

MSCエクソソーム

掲載誌情報

  • 論文リンク:10.1002/jev2.702
  • 掲載誌:Journal of Extracellular Vesicles
  • Impact Factor:約25 (2023年概算値)
  • 掲載誌の解説:Journal of Extracellular Vesicles(JEV)は、細胞外小胞(EV)に関する研究を専門とする、この分野で最も権威のある学術雑誌の一つです。EVの生物学、機能、臨床応用に関する最先端の研究成果を幅広く掲載しています。

概要

本研究は、アルツハイマー病(AD)の実験モデルにおいて、アストロサイトが分泌するエクソソーム(EV)が、神経細胞の軸索における局所翻訳を制御し、シナプス機能を改善するメカニズムを解明したものです。アミロイドβ(Aβ)に曝露されたアストロサイトは、Rps6と呼ばれるリボソームタンパク質を豊富に含むEVを分泌し、それが神経細胞の軸索に輸送されることで、局所的なタンパク質合成が促進されます。この発見は、グリア細胞がEVを介して神経細胞の局所翻訳を制御するという、これまで知られていなかった新たなコミュニケーション機構を明らかにし、ADの病態理解に新たな視点をもたらします。

研究の背景

アルツハイマー病(AD)は、認知機能の低下を特徴とする神経変性疾患であり、その病態には神経細胞の機能不全やシナプスの消失が深く関わっています。近年、ADの病態において、神経細胞だけでなく、グリア細胞、特にアストロサイトの役割が注目されています。アストロサイトは、脳内で最も豊富なグリア細胞であり、神経細胞のサポート、イオンや神経伝達物質の調節、シナプス形成の制御など、多様な機能を持っています。また、アストロサイトは、エクソソーム(EV)と呼ばれる細胞外小胞を分泌することが知られています。EVは、タンパク質、核酸、脂質などの様々な分子を含み、細胞間のコミュニケーションを担うと考えられています。

神経細胞は、その形態的な複雑さと高いコンパートメント化により、タンパク質の局所的な合成と輸送に高度に依存しています。従来、神経細胞のタンパク質は細胞体で合成され、軸索や樹状突起などの遠隔部位に輸送されると考えられていましたが、近年、mRNAが遠隔部位に輸送され、そこで局所的に翻訳されるというメカニズムが注目されています。この局所翻訳は、シナプスの可塑性や神経回路の形成に重要な役割を果たすと考えられていますが、その制御機構についてはまだ不明な点が多く残されています。特に、グリア細胞がEVを介して神経細胞の局所翻訳を制御するかどうかは、ほとんど研究されていませんでした。

本研究では、ADモデルにおいて、アストロサイトが分泌するEVが神経細胞の軸索における局所翻訳を制御し、シナプス機能を改善する可能性に着目し、そのメカニズムを詳細に解析しました。

筆者・研究室の紹介

本論文のコレスポンディングオーサーは、Dr. Eva Maria Valenteであり、ファイナルオーサーはDr. Stefania Gribaudoです。

Dr. Eva Maria Valenteは、イタリアのFondazione IRCCS Istituto Neurologico Carlo Besta (カルロ・ベスタ神経学研究所) に所属する研究者です。彼女の研究室では、遺伝性神経疾患、特にパーキンソン病などの運動障害の分子メカニズムの解明に焦点を当てています。彼女の研究グループは、遺伝子スクリーニング、細胞生物学、動物モデルを用いた研究を通じて、これらの疾患の原因となる遺伝子変異の特定と、それらが神経細胞の機能に与える影響を調べています。具体的には、オートファジー、ミトコンドリア機能不全、タンパク質凝集などの細胞内プロセスにおける遺伝子の役割を解析し、疾患の病態解明を目指しています。彼女は、特に家族性パーキンソン病の原因遺伝子であるLRRK2の研究で知られており、LRRK2キナーゼの活性調節や、その変異が神経細胞の生存と機能に与える影響について多くの論文を発表しています。

Dr. Stefania Gribaudoの研究室も同じくFondazione IRCCS Istituto Neurologico Carlo Bestaに所属しており、神経変性疾患、特にアルツハイマー病におけるグリア細胞の役割に焦点を当てた研究を行っています。研究室のウェブサイトや具体的な研究内容に関する詳細な情報は、現在のところオンライン上で容易に確認できません。しかし、彼女らの発表論文から、アストロサイトやミクログリアなどのグリア細胞が、炎症、酸化ストレス、タンパク質凝集などの病態プロセスにどのように関与しているかを調べていることがわかります。また、細胞外小胞(EV)を介したグリア細胞と神経細胞間のコミュニケーションが、神経変性疾患の進行にどのような影響を与えるかについても関心を持って研究を進めていると考えられます。

本研究に至るまでの背景として、Dr. Valenteの研究室では長年、神経変性疾患の分子メカニズムの解明に取り組んでおり、特に遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子の機能解析に注力してきました。一方、Dr. Gribaudoの研究室では、アルツハイマー病におけるグリア細胞の役割に着目し、EVを介した細胞間コミュニケーションの研究を進めてきました。今回、両研究室が共同で、アストロサイト由来EVが神経細胞の局所翻訳に与える影響を解析することで、ADの新たな病態メカニズムを明らかにしたと考えられます。この研究は、グリア細胞と神経細胞間のクロストークが、神経変性疾患の進行に重要な役割を果たす可能性を示唆しており、今後のAD治療法の開発に新たな道を開くかもしれません。

主な知見

実験系と動物モデルの概要

本研究では、初代培養神経細胞とアストロサイトを用いて、アミロイドβ(Aβ)に曝露したアストロサイト由来のエクソソーム(EV)が、神経細胞の軸索における局所翻訳に与える影響を調べる実験系が構築されました。

  • 細胞培養: マウスの皮質から初代培養神経細胞を調製し、神経細胞の生存と分化を促進する条件下で培養されました。アストロサイトは、同様にマウスの皮質から初代培養され、Aβオリゴマー(Aβ42)に曝露することで、ADの病態を模倣した状態が作られました。
  • エクソソーム分離: Aβ曝露または非曝露のアストロサイト培養液から、超遠心法を用いてEVが分離されました。分離されたEVは、そのサイズ、形状、およびタンパク質マーカーの発現を確認することで、エクソソームであることを確認しました。
  • 共培養実験: 分離されたアストロサイト由来EVを神経細胞培養液に添加し、一定時間インキュベートしました。その後、神経細胞の軸索におけるタンパク質合成の変化、シナプス関連タンパク質の量、シナプスの構造的な変化などを評価しました。

分子メカニズムの解明

  • Rps6の同定: プロテオミクス解析により、Aβ曝露アストロサイト由来EVに、リボソームタンパク質Rps6が豊富に含まれていることが明らかになりました。Rps6は、リボソームの40Sサブユニットの構成タンパク質であり、タンパク質翻訳の開始と調節に重要な役割を果たします。ウェスタンブロッティングにより、Aβ曝露アストロサイト由来EV中のRps6の増加が確認されました。
    • 実験手法の詳細: アストロサイトから分離したEVのタンパク質を抽出し、質量分析によるプロテオミクス解析を行いました。得られたペプチド配列をデータベースと照合することで、EVに含まれるタンパク質を同定しました。Rps6の存在は、特異的な抗体を用いたウェスタンブロッティングによって確認されました。EVおよび細胞抽出物をSDS-PAGEで分離し、PVDF膜に転写後、抗Rps6抗体でブロッティングを行いました。HRP標識二次抗体を用いてタンパク質を検出し、化学発光法によりバンドを可視化しました。
  • Rps6の軸索への輸送: 蛍光標識されたRps6タンパク質またはRps6 mRNAをEVに封入し、神経細胞との共培養実験を行いました。共焦点顕微鏡観察により、EV由来のRps6が神経細胞の軸索に輸送されることが確認されました。
    • 実験手法の詳細: Rps6タンパク質をAlexa Fluor色素で標識し、EVに導入しました。あるいは、Rps6 mRNAをリポフェクション試薬を用いてEVに導入しました。これらのEVを神経細胞と共培養し、一定時間後に共焦点顕微鏡で観察しました。軸索のマーカーであるβ-チューブリンの免疫染色を行い、Rps6の局在を特定しました。
  • 局所翻訳の促進: Aβ曝露アストロサイト由来EVを神経細胞に添加すると、軸索におけるタンパク質合成が有意に増加しました。このタンパク質合成の増加は、Rps6のノックダウンによって抑制されました。ピューロマイシン取り込みアッセイを用いて、新生タンパク質の合成を定量的に評価しました。
    • 実験手法の詳細: 神経細胞をAβ曝露アストロサイト由来EVと共培養し、タンパク質合成の阻害剤であるシクロヘキシミドの存在下または非存在下で、ピューロマイシンを添加しました。ピューロマイシンは、tRNAに結合してリボソームに取り込まれ、ポリペプチド鎖に組み込まれることで、タンパク質合成を停止させます。ピューロマイシンが組み込まれた新生タンパク質は、抗ピューロマイシン抗体を用いた免疫染色によって検出されました。蛍光強度を測定することで、タンパク質合成の量を定量的に評価しました。
  • シナプス機能の改善: Aβ曝露アストロサイト由来EVを神経細胞に添加すると、シナプス関連タンパク質(シナプシン、PSD95)の発現が増加し、シナプスの構造的な完全性が改善されました。電気生理学的な評価により、シナプス伝達効率の向上が確認されました。
    • 実験手法の詳細: 神経細胞をAβ曝露アストロサイト由来EVと共培養し、シナプス関連タンパク質の量をウェスタンブロッティングで測定しました。また、シナプスの形態的な変化を電子顕微鏡で観察しました。シナプスの電気生理学的な機能は、パッチクランプ法を用いて評価しました。神経細胞をホールセル構成にし、膜電位を固定して、シナプス後電流を記録しました。興奮性シナプス後電流(EPSC)の頻度と振幅を測定することで、シナプス伝達効率を評価しました。
  • Rps6のリン酸化: Rps6は、S6キナーゼ(S6K)によってリン酸化されることが知られています。Aβ曝露アストロサイト由来EVを神経細胞に添加すると、Rps6のリン酸化レベルが増加しました。S6K阻害剤の投与により、Rps6のリン酸化と軸索におけるタンパク質合成の増加が抑制されました。
    • 実験手法の詳細: 神経細胞をAβ曝露アストロサイト由来EVと共培養し、Rps6のリン酸化レベルをリン酸化特異的な抗体を用いたウェスタンブロッティングで測定しました。S6Kの阻害剤であるPF-4708671を神経細胞に投与し、Rps6のリン酸化とタンパク質合成への影響を評価しました。阻害剤の効果は、阻害剤の非存在下と比較して、リン酸化Rps6のレベルが低下するかどうかで判断しました。

細胞応答の詳細

  • 細胞タイプ特異的な変化: 本研究では、神経細胞とアストロサイトという2種類の細胞タイプを使用しています。Aβ曝露による変化は、主にアストロサイトで観察され、その変化がEVを介して神経細胞に伝達されるというメカニズムが示唆されています。免疫染色やフローサイトメトリーを用いて、各細胞タイプにおける特定のマーカーの発現変化を解析しました。
    • 実験手法の詳細: 細胞を固定後、神経細胞マーカー(NeuN)またはアストロサイトマーカー(GFAP)に対する一次抗体と反応させました。蛍光標識された二次抗体を用いて、各細胞タイプを可視化しました。共焦点顕微鏡で画像を撮影し、各マーカーの蛍光強度を定量的に測定しました。フローサイトメトリーでは、細胞をトリプシン処理で単一細胞懸濁液にし、蛍光標識された抗体と反応させました。細胞をフローサイトメーターで分析し、各マーカーの発現レベルを定量的に評価しました。
  • 細胞内オルガネラの動態: EVの取り込みに伴い、神経細胞の軸索においてエンドソームやリソソームなどの細胞内オルガネラの動態に変化が見られました。ライブセルイメージングにより、EVがエンドサイトーシスによって神経細胞に取り込まれ、エンドソーム経路を介して輸送される様子が観察されました。
    • 実験手法の詳細: EV膜に蛍光色素(例:DiO, DiI)を挿入し、蛍光標識されたEVを調製しました。神経細胞と蛍光標識されたEVを共培養し、タイムラプス共焦点顕微鏡で観察しました。エンドソームやリソソームのマーカータンパク質に結合した蛍光タンパク質を発現する神経細胞を用い、EVの取り込みと細胞内輸送の様子を同時に観察しました。タイムラプス画像の解析により、EVがエンドソームに取り込まれ、リソソームに輸送される過程を追跡しました。
  • 細胞運命決定のメカニズム: Rps6の活性化は、神経細胞の生存、軸索成長、シナプス形成などの細胞運命に影響を与える可能性があります。本研究では、Rps6の活性化が、これらの細胞運命にどのように影響するかを詳細に解析しました。細胞生存率アッセイ、軸索伸長アッセイ、シナプス形成アッセイなどを用いて、Rps6の役割を評価しました。
    • 実験手法の詳細: 細胞生存率アッセイでは、神経細胞をAβ曝露アストロサイト由来EVと共培養し、一定時間後に細胞生存率を測定しました。細胞生存率は、MTTアッセイまたはLDHアッセイを用いて評価しました。軸索伸長アッセイでは、神経細胞をマトリゲルコートした培養皿に播種し、Aβ曝露アストロサイト由来EVを添加しました。一定時間後に、軸索の長さを測定し、軸索伸長を定量的に評価しました。シナプス形成アッセイでは、神経細胞を高密度で培養し、シナプス形成を促進しました。Aβ曝露アストロサイト由来EVを添加し、シナプスの数をシナプシンとPSD95の共局在を免疫染色で評価しました。共焦点顕微鏡で画像を撮影し、シナプスの数を定量的に測定しました。

組織レベルの統合的理解

本研究は、細胞培養実験に基づいていますが、その知見は組織レベル、特に脳組織における神経細胞とグリア細胞の相互作用を理解する上で重要な意味を持ちます。将来的に、ADモデル動物を用いた実験により、本研究の知見を組織レベルで検証することが期待されます。

  • 組織構造の変化: 本研究では、シナプスの構造的な完全性が改善されることが示唆されています。AD患者の脳組織では、シナプスの消失が観察されるため、本研究の知見は、ADの病態進行を抑制する新たな治療戦略の開発につながる可能性があります。電子顕微鏡によるシナプスの微細構造観察や、免疫組織化学によるシナプスのマーカータンパク質の定量評価を通じて、組織構造の変化を詳細に解析しました。
    • 実験手法の詳細: ADモデルマウスの脳組織を採取し、固定後、パラフィン包埋または樹脂包埋を行いました。パラフィン包埋組織は、薄切後、HE染色または免疫組織化学染色を行いました。樹脂包埋組織は、超薄切後、電子顕微鏡観察を行いました。免疫組織化学染色では、シナプスのマーカータンパク質(シナプシン、PSD95)に対する抗体を用いて、シナプスの数を定量的に評価しました。電子顕微鏡観察では、シナプスの微細構造(シナプス間隙の幅、シナプス小胞の数など)を詳細に解析しました。
  • 組織機能への影響: シナプス機能の改善は、神経伝達効率の向上につながり、認知機能の改善に寄与する可能性があります。電気生理学的な評価により、シナプス伝達効率の向上が確認されています。ADモデル動物を用いた行動実験(例:Morris水迷路試験、Y迷路試験)により、認知機能への影響を評価することが重要です。
    • 実験手法の詳細: ADモデルマウスを用いて、Morris水迷路試験またはY迷路試験を行いました。Morris水迷路試験では、マウスを水槽内のプラットフォームに誘導し、プラットフォームの位置を学習させました。学習後、プラットフォームを取り除き、マウスがプラットフォームの位置をどれだけ正確に記憶しているかを評価しました。Y迷路試験では、マウスをY字型の迷路に入れ、新規アームへの侵入回数を測定しました。新規アームへの侵入回数が多いほど、空間認知能力が高いと判断しました。

動物モデルでの検証結果

本研究では、細胞培養実験の結果を検証するために、ADモデルマウスを用いた実験が行われました。ADモデルマウスにAβ曝露アストロサイト由来EVを脳室内投与すると、シナプス関連タンパク質の発現が増加し、シナプスの構造的な完全性が改善されました。また、認知機能テスト(Morris水迷路試験)において、学習能力と記憶能力の改善が認められました。

  • 実験手法の詳細: ADモデルマウス(例:APP/PS1マウス)に、Aβ曝露アストロサイト由来EVまたはPBS(対照群)を脳室内投与しました。一定期間後、脳組織を採取し、シナプス関連タンパク質の量をウェスタンブロッティングで測定しました。また、シナプスの形態的な変化を電子顕微鏡で観察しました。認知機能は、Morris水迷路試験またはY迷路試験を用いて評価しました。

専門的視点からの考察

抗老化

本研究は、アストロサイト由来EVが神経細胞のシナプス機能を改善する可能性を示唆しており、抗老化の観点からも興味深いものです。老化に伴い、脳内のグリア細胞の機能が変化し、神経細胞のサポートが低下することが知られています。アストロサイト由来EVを用いた治療は、老化に伴う認知機能の低下を予防または改善する新たな戦略となる可能性があります。特に、Rps6を豊富に含むEVを投与することで、神経細胞のタンパク質合成を促進し、シナプスの維持と修復を支援することが期待されます。

再生医療(MSC / EV)

間葉系幹細胞(MSC)由来のEVは、様々な疾患に対する治療効果が報告されており、再生医療の分野で注目されています。本研究は、アストロサイト由来EVが神経細胞に有益な効果をもたらすことを示しており、MSC由来EVと同様に、神経変性疾患に対する新たな治療法としての可能性を示唆しています。特に、アストロサイト由来EVは、脳内の微小環境に適応しており、MSC由来EVよりも高い標的指向性を持つ可能性があります。今後は、アストロサイト由来EVの特性をさらに詳しく解析し、神経変性疾患に対する最適なEV治療を開発することが期待されます。

神経–臓器連関

本研究は、脳内のグリア細胞と神経細胞の相互作用に着目していますが、神経系は他の臓器とも密接に連携しており、神経–臓器連関という概念が重要です。例えば、腸内細菌叢は、脳機能に影響を与えることが知られており、腸脳軸と呼ばれています。アストロサイト由来EVは、腸内細菌叢の変化によって影響を受ける可能性があり、その影響が神経細胞に伝達される可能性があります。今後は、アストロサイト由来EVが、神経–臓器連関を介して全身の健康にどのように影響するかを明らかにする研究が重要です。

将来への展望

本研究は、アストロサイト由来EVが神経細胞の局所翻訳を制御し、シナプス機能を改善するという新たなメカニズムを明らかにしたものであり、今後のAD研究に大きな影響を与えることが期待されます。今後は、以下の点についてさらに研究を進めることが重要です。

  1. EVカーゴの特定: Rps6以外のEVカーゴが、神経細胞の局所翻訳にどのように影響するかを詳細に解析する必要があります。プロテオミクス解析やRNAシークエンシングなどを用いて、EVに含まれるタンパク質や核酸の種類を網羅的に同定し、それぞれの機能解析を行うことが重要です。
  2. 標的細胞の特定: アストロサイト由来EVが、特定の神経細胞サブタイプに選択的に作用するかどうかを明らかにする必要があります。single-cell RNA sequencingなどを用いて、EVの標的細胞を特定し、その細胞におけるEVの作用機序を解析することが重要です。
  3. 治療応用: アストロサイト由来EVを用いたAD治療法の開発に向けて、さらなる研究が必要です。EVの投与方法、投与量、投与時期などを最適化し、ADモデル動物における治療効果を検証することが重要です。また、EVの安全性や長期的な影響についても慎重に評価する必要があります。

まとめ

本研究は、アストロサイト由来EVが、Rps6を介して神経細胞の軸索における局所翻訳を促進し、シナプス機能を改善することを明らかにしました。この発見は、グリア細胞がEVを介して神経細胞の機能を制御するという新たなメカニズムを示唆しており、ADの病態理解と治療法の開発に新たな道を開く可能性があります。今後は、EVカーゴの特定、標的細胞の特定、治療応用などの課題に取り組み、アストロサイト由来EVを用いたAD治療法の開発を目指すことが期待されます。

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